5G時代のまちづくり みなとみらいの挑戦

2021年08月20日
話し手
  • 一般社団法人横浜みなとみらい21
  • 事務局次長・企画調整部長 古木淳氏(左)
  • 企画調整部 部次長・企画調整課担当課長 オープンイノベーション推進担当 大橋直之氏(右)

5Gの活用は、さまざまな分野に可能性を広げようとしている。まちづくりも、その可能性の1つだ。国内外の先端企業の研究開発拠点や商業・医療施設などが集まる「みなとみらい」は、5Gの実証実験の場としても最適な環境を備えており、5Gを活用したまちづくりへの取り組みにも積極的に挑もうとしている。今回は、みなとみらいのエリアマネジメントを担う横浜みなとみらい21に、5G時代のまちづくりについて聞いてみた。

オープンイノベーションが育つみなとみらいエリア

──みなとみらいとは、どのような特徴を持ったエリアなのでしょうか。

大橋 みなとみらいエリアは、横浜市の都心部を一体化させる「都心部強化事業」として、就業人口19万人・居住人口1万人を目標に生まれた都市です。横浜みなとみらい21は、みなとみらいエリア内の全ての地権者の方々が会員となっているエリアマネジメント団体であり、まちづくり調整や文化プロモーション、環境対策や防災対策などの事業を担っています。

 みなとみらいエリアには、さまざまな業種の企業の拠点が集積しています。本社機能を持ったオフィスビルよりも、新規事業を開拓するスタッフや新技術を生み出すエンジニアなどを抱える研究開発施設が多く、多業種の人たちが徒歩圏で集まれる距離に集積していることが大きな特徴となっています。また、オフィスや商業施設だけでなく、大学や病院、展示ホール、遊園地の他、マンションも立地しており、世の中のさまざまなシチュエーションがコンパクトにまとまった、日常と非日常が同居しているようなエリアとも言えるでしょう。

 こうした環境の中、みなとみらいエリアでは会員企業による、さまざまなオープンイノベーションが実践されています。例えば、エンジニアの交流イベント「横浜ガジェットまつり」や、企業横断のプロジェクト創出を目指す「横濱OneMM」という任意団体が、eスポーツの企業対抗戦を開催するなど、若手社員が中心となり企業の枠を越えた取り組みを行っています。また、みなとみらいエリアは自動運転やロボットなど、先端技術の実証実験フィールドとしても活用されており、大企業とスタートアップとのコラボレーションもここ数年で増えてきました。

──横浜みなとみらい21では、5Gに対してどのように取り組んでいこうとしているのでしょうか。

大橋 今年の3月に、国内外の社会課題解決に向けたイノベーション創出を目指す、産学公民の連携基盤「横浜未来機構」が立ち上がりました。横浜みなとみらい21は、その事務局を担っており、現在、活動準備をしています。こうしたことから、5Gに対しても横浜未来機構の活動の一環として、「早期の基地局環境構築」や「実証実験サポート」、「勉強会・交流会の開催」「5Gを活用したイベントの開催」といったことに取り組む、「横浜5Gワンストップセンター」を構築する予定です。

<みなとみらいエリアでは「横浜ガジェットまつり」など、さまざまなイベント通じてエンジニアの交流が図られている>
<みなとみらいエリアでは「横浜ガジェットまつり」など、さまざまなイベント通じてエンジニアの交流が図られている>
(写真提供:横浜みなとみらい21)

5Gワンストップセンターとしての取り組み

──「横浜5Gワンストップセンター」で計画している活動について教えてください。

大橋氏 インタビュー風景

大橋 まず、「早期の基地局環境構築」を目指し、通信キャリア各社やローカル5G事業者との連携を支援しながら、早期にシームレスな環境を構築します。例えば、通常はキャリアが基地局を設置する際、地権者との交渉や調整に多くの時間を費やします。そこで、みなとみらいエリアであれば、全地権者と繋がっている横浜みなとみらい21がパイプ役となり、キャリアとエリア内の建物の所有者の連携を支援できるのです。

大橋氏 インタビュー風景

大橋 まず、「早期の基地局環境構築」を目指し、通信キャリア各社やローカル5G事業者との連携を支援しながら、早期にシームレスな環境を構築します。例えば、通常はキャリアが基地局を設置する際、地権者との交渉や調整に多くの時間を費やします。そこで、みなとみらいエリアであれば、全地権者と繋がっている横浜みなとみらい21がパイプ役となり、キャリアとエリア内の建物の所有者の連携を支援できるのです。

 また、ローカル5Gに関してもエリア内に興味を持っている事業者がいるので、そういった事業者への情報提供や合同説明会の開催なども検討しています。

──「実証実験サポート」への取り組みはどうでしょうか。

大橋 5Gを活用したアプリケーションなどの実証実験を行いたい場合にも、みなとみらいエリアの多くの事業者との接点があるので、「こういうシチュエーションで、こういう実証をやりたい」といった希望があれば、私たちが会員の間に立ってコーディネートさせていただきます。

 一方で、みなとみらいエリアには複数の高層ビルが建っており、電波特性上はかなり通信の難易度が高いと言われています。だからこそ、このエリアで試すべきシチュエーションがあると思っています。例えば、ビル街を車が移動しながら、シームレスに通信が途切れずサービスが成り立つかどうかの検証などです。特にこのエリアは自動車産業に関わるメーカーや国内外のサプライヤーも多いので、海外からも関心を集める実証実験ができるのではないでしょうか。

古木 見通しのよいエリアだと、実証実験は行いやすいでしょう。ですが、5Gはやはり4Gに比べて電波の届く距離が短くなり、遮蔽物に弱い。ですから、実証実験を行うには街中での検証が重要だと感じている事業者も多いようです。そういった、キャリアやサービス提供者などの思いに、みなとみらいエリアはお応えできると思っています。

 また、みなとみらいエリアには自動車関連企業以外にも、さまざまな分野のテクノロジーを持つ企業が集まっているので、異業種連携の調整もしやすく、実証実験の場としては最適ではないでしょうか。

大橋 みなとみらいエリアで成功すれば、他の都市へも実証実験の横展開が望めると思います。

──すでに、「5Gを活用したイベント」の実績もあるのでしょうか。

大橋 今年の3月に、NTTドコモ主催でオンライン開催した「Minatomirai 5G Conference」では、みなとみらいエリアにある展示会場パシフィコ横浜に5Gの基地局を設置し、渋谷のライブハウスから送られてきたアイドルグループのライブ映像を、VRゴーグルをかけた参加者が視聴しました。渋谷から遠く離れたパシフィコ横浜にいても、まるでその場にいるような臨場感が味わえるデモンストレーションとなりました。

 このイベントでは他にも、パシフィコ横浜と神奈川県内にある養護学校を5Gで繋ぎ、パシフィコ横浜側にいるバンドと養護学校側にいる児童とで遠隔音楽セッションを行うなど、5Gの持つ高速・大容量・低遅延という特徴が分かりやすく理解できるデモが行われました。

<5Gを活用したイベント「Minatomirai 5G Conference」では、渋谷と横浜を結んだライブ中継や遠隔音楽セッションなどを公開>
<5Gを活用したイベント「Minatomirai 5G Conference」では、渋谷と横浜を結んだライブ中継や遠隔音楽セッションなどを公開>
(写真提供:NTTドコモ)

5Gを活用したまちづくりへ

──みなとみらいエリアをテストベッドにして、まちづくりに5Gを活用する取り組みはいろいろと考えられますね。

大橋 みなとみらいの周辺には、横浜駅や関内といった観光スポットもあります。こういった環境を生かして、将来は例えばナイトエコノミーみたいな形でモビリティにエンターテイメントが紐付くようなサービスなども、まちづくりへの取り組みにつながっていくと思っています。

 横浜市内の企業に対して行ったアンケートでは、例えばメーカーからは「実際の都市空間で5G環境が整うなら、現在テストベッドで行っている実験をみなとみらいで行いたい」といった回答がありました。また、集客施設からも、「5Gを活用した新たなイベントスタイルの構築を施設としても協力して、実現していきたい」といった回答があり、ビル所有企業からは「街中に5Gを広げるコンセプトを実現するため、基地局への場所提供なども検討可能」といった回答をいただきました。今後も5Gの通信環境が整っていけば、多くの企業が積極的に活用したいとの意向を示しています。

古木氏 インタビュー風景

古木 みなとみらいエリアには、大規模なイベント会場が複数あります。今後、そういった場所で同時にイベントが開催された際の混雑の解消においても、5Gの低遅延や多数同時接続などの特徴を生かせば複数のサイネージにリアルタイムに情報を表示させて人を誘導できます。そのためのサイネージの設置についても、私たちはエリア内の全ての地権者と相談しながら最善の場所を決められます。

古木氏 インタビュー風景

古木 みなとみらいエリアには、大規模なイベント会場が複数あります。今後、そういった場所で同時にイベントが開催された際の混雑の解消においても、5Gの低遅延や多数同時接続などの特徴を生かせば複数のサイネージにリアルタイムに情報を表示させて人を誘導できます。そのためのサイネージの設置についても、私たちはエリア内の全ての地権者と相談しながら最善の場所を決められます。

 また、現在、都市をサイバー空間に再現する「Project PLATEAU」が国土交通省の主導のもとに進められています。そういった都市の見える化も、5Gによってビッグデータを活用すればデジタルツインで実現できるでしょう。

 このように、5Gの特徴を生かしたまちづくりへの取り組みには、さまざまな可能性が広がっていると思っています。

──今後、横浜みなとみらい21が考えている5Gへの取り組みのロードマップを教えてください。

大橋 今年度は、通信会社と連携して、実証や実装を想定した基地局のプランニングや一部設置などを実現していきたいと考えています。同時に、実証実験の試行を進めます。来年度以降は、基地局の面的な設置を実現し、実証実験を本格的に受け入れていきたいと思っています。最終的には2025年度以降、ソリューション実装を進展させ、海外と連動した実証実験を行ったり、6G展開計画へも貢献したいと考えています。

みなとみらいエリアの5Gによるまちづくりは海外にも波及していく

横浜は1859年の開港以来、日本の近代化の原点として発展し、世界に開かれた都市としても発展を続けてきた。そんな横浜のウォーターフロントにある新都心が、5Gによって再び日本の未来都市モデルとして注目されようとしている。将来、みなとみらいエリアでまちづくりに5Gが活用されるようになると、その先行事例は日本だけでなく海外にも波及していくだろう。

<みなとみらいエリアのさまざまな施設を5Gで結んだまちづくりへ>
<みなとみらいエリアのさまざまな施設を5Gで結んだまちづくりへ>
(写真提供:横浜みなとみらい21)

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